気がついたら、ここに居て、少しずつ少しずつ大きくなっていた。
暖かくなると、なんだか僕の体はむずむずして、嬉しくなって、思い切り手を伸ばす。たくさんの葉が芽生えてくる。
そして僕らは、とてもにぎやかに過ごす。
けれどやがて、彼らはひらひらと踊るように旅立つ。たくさん生まれてきた茶色い可愛い子供たちも旅立ってゆく。
皆口をそろえて言う。さよならじゃないよ。いのちの決まりだって。
僕にはよくわからない。
決まり、ってなんだ。
どうしてずっと一緒じゃいけないのかな。
寒いある日、僕は縮こまっていたい気持ちだったけれど、ふと伸びをしてみた。
隣にたたずんでいる彼女の手にぶつかって、やあ、ごめんと謝る。
彼女のところも、暖かくなると、僕でもきれいだなあと思う位の花が咲いてそれはにぎやかだ。
その彼女も、今は静かに、寒さも、寂しさも、まるで気にしていないように、すっと立っている。
僕は聞いてみたくなった。
「君は知ってるの?いのちの決まりのこと。」
彼女はふと笑ったように見えた。
「私もね。わからないの。」
けど……彼女も大きく伸びをした。
僕と彼女の手が重なった。
「わからないけど、こうしているのも、いいものだって思うの。」
彼女の手が優しく揺れた。僕の手もそれに合わせて優しく揺れる。
ほんとだ。
気づいたら、周りのみんなも、僕らに合わせるように、それぞれ揺れていた。
僕はもう、さみしくなかった。